冷凍かつお職人の「みるチカラ」vol.2 ロインバンドソー編

2020.05.28
最初が肝心、かつお製品の良し悪しはバンドソーで決まる!?職人が語るその秘訣とは。

おいしいかつおがすぐに食べられる状態で私たちの食卓に並ぶまでには様々な加工工程が施してあります。その一翼を担う冷凍鰹水揚げ日本一の焼津市が誇る水産加工業の中から、今回は第一次工程ロイン加工の基盤である、バンドソーについて紹介します。
前回のvol.1では冷凍かつお職人の「みる力」Vol.1 市場・仲買人編紹介しました。

そもそも「ロイン」という言葉すら聞きなれないですよね。簡単に言うと、バンドソーという電動のこぎりを使い下図のようにかつお一本の頭と尾を切り落とし、胴体を4本(背2本と腹側の2本)に切り分けた状態のことです。

通称「バンド」と呼ばれるこの仕事は、ロイン工程内で最初に行われる作業となります。※下の動画でかつお一本がロインになるまでをご覧いただけます。


そして冒頭でお伝えしたとおり、この工程が基盤となりロイン製品またはその先のたたき製品などの良し悪しに関わってきます。切る位置が中心から外れたりしたら、本来出てくるはずの骨が見えず、骨を削る次の工程がやり辛くなり、結果それが製品への骨残りや能率の低下の原因となってしまいます。よって先の加工をスムーズに、かつきれいな形状を作るために、大変重要な工程と言えます。

加工としては最初に行う工程ですが、この作業を覚えるには多くの経験や基本的な加工技術の習得はもちろんですが、それだけでなく、バンドは少しの気の緩みが重大なケガにつながることもあります。そのため慎重さを併せ持った人間性もとても重要になります。そして、初めに教わるバンド以降の工程を覚えておけば骨の位置や、どうしたら削りやすくなるかなど先の職人たちの工程にも気遣うことができます。そんな先を「みる」という意識が良い製品づくりにも大きく関わると考えております。

では実際にバンドとして活躍している、ベテランとルーキーの3人にお話を伺ってみました。

〇やろうと思ったきっかけは?

ー鈴木さん(8年):それまで小型のバンドソーを使用していて、バンドソーを使うことに興味を持ち始めていたタイミングで、声をかけてもらい挑戦することにしました。
ー坂口さん(4年):華のある仕事だなあ。と憧れを持ち、自分にもできたらかっこいいと思ったから志望しました。
ーネトさん(8か月):経験を積んできて、自分にもバンドをできるようになりたいと思ったから。

バンドソーはロイン加工工程において憧れのある仕事のようですね。

〇実際にやってみて、やりがいや嬉しかったことは何ですか?

ー鈴木さん:実際に自分が切ったものがイメージ通りにできたときが嬉しいですね。
ー坂口さん:自分の切ったものを褒められたり、自分の満足のいくきれいな製品を作れた時。バンド内側に溜まる魚の切り粉があっという間に溜まった時は、自分の作業スピードが速くなったと実感できてうれしく思う。
ーネトさん:まっすぐ、きれいに切れたときや、良いリズムで切り続けられているとき。目標加工数量を超えたときに達成感を感じます。

〇では、逆に苦労したことはありますか?

ー鈴木さん:魚のサイズや、身脂の有無で刃を入れたときの感覚が大きく変わってくるので、力の入れ具合などを個体に合わせて臨機応変に対応していく必要があります。
ー坂口さん:切る位置や角度を間違えてしまうと、骨の残り方、また血合いの形状が変わり次の加工に影響してしまうため、一本一本集中して正確に切ること。
ーネトさん:常にリズムよくペースを落とさず、そしてブレないよう維持することに苦労しています。

経験を積むごとに、常に技術面での新しい課題が生まれている印象です。そして、まずは自分のリズムを作ること。さらに技術だけでなく集中力など精神的な部分も必要なようです。

〇ちなみに、鈴木さんの言っていた『身脂の有無』とは?

ー脂は超低温冷凍においても完全に固まることがないので、身脂があるかつおは刃が入りやすくあまり力を入れなくてもいいのですが、脂がない個体の身は完全に凍結されているので強い力が必要となり、その分体への負担も大きいですね。初めのうちはそれで非常に苦労しましたよ。

〇こだわりや工夫していることを教えてください。

ー鈴木さん:作業中はブレ防止のため、軸となる左足を台にくっつけて安定させています。
ー坂口さん:一本一本集中して、より良い製品を作るため、切った後の形状を確認することを心がけて作業をしています。
ーネトさん:まだまだ未熟なので、これといったこだわりはありませんが、今はとにかく基本を身に付けるため教わった通りに作業することを心がけています。

 

―それでは最後に、かつおを食べている皆さんにメッセージをお願いします。

 

バンド歴8年の鈴木さん

「毎日一生懸命かつお製品を加工しています。私たちの作った商品を食べてくれてくれる人がいる限り、真剣に頑張り続けていきたいです!」

バンド歴4年の坂口さん

「安心・安全でより良い商品を作れるよう毎日頑張っています!山福水産のおいしいかつおをぜひ食べてみてください。」

バンド歴8ヶ月のネトさん

「一本一本丁寧に心を込めて加工をしています。安心して味わっていただければ嬉しく思います。」

 

難易度が高く危険な工程であるバンドソー。誰でもできる仕事ではなく、現場での多くの経験や、細心の注意を払って常に集中力を保つことが必要です。それにプラスして技術力と作業のコツを掴むセンスと後の工程を思いやる心も欠かせません。そしておいしいかつお製品の良し悪しを決める非常に重要な工程といえます。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter で山福水産株式会社をフォローしよう!